月光 4



2001/09/29 (土) 夜から朝へ
夜から朝へ 変る時間を
あなたの横顔見ながら
静かにここにいる

あなたの心に私は居ますか?

どこへも 多分私は行けるから
あなたは私を捨てる日を
それほど辛くもなく迎えるのかな

私はあなたよりこんなに小さい

それでも私は
静かに過ぎる時を
愛しくて抱きしめたくて

愚かでもいい
朝から夜へ
もう一度繰り返したい



2001/09/06 (木) あと5分
夕立が去って 不安げに帰り道急ぐ人達抜いていく
路上の歌声 到着のアナウンス ファーマシーの安売りの声

何度もあなたをここで待って
何度も見慣れた風景なのに

あと5分
あなたを乗せた列車が滑り込む

ホームから降りてくるあなたを想像しながら
ぼんやりと眺めてる

携帯を握り締めて目を泳がせて
平凡だけど そんな風にあなたを待つこの気持ちが好き

あと5分
あなたが改札をすり抜けていく

1番最初の私の顔はどんな風に作ればいい?
ほんとは嬉しくてだけど素直に笑えない

ほんとは腕に飛び込みたくて
だけど照れ屋のあなたを優先する

何度会ってもやっぱり
高鳴る意味を教えて

あと5分
愛しい人を待つ時間



2001/10/31 (水) 雨はもうすぐ
さやか月抱いて眠る夜にまで 忍び込みしか 君の影
銀の光が落ちる先 君に注いだ 涙に似て

冷たき躯に手を当てて 静かに座した人の顔
何度も何度も目でなぞる 自らの愛を重ねつつ

忘れてくれと恐らくは 君は言いたし でも言えず
この胸にある孤独の陰が 君をつかんだ唯一の訳

飢えた大地に注ぐよう まるで一時降る夕立
冷たく潤す季節には もういらないと言われたよう

冷えた心に注ぐよう 雨はもうすぐ白くなる
雨はもうすぐ 凍りだす



2001/10/31 (水) 11月のTATOO
あなたと全部の季節を駈けた もうすぐ一巡り もうすぐ11月

シルクのようなお互いの肌をすべる感触 あの日より鮮やかに

暖かく湿った空気を吸い込みながら 私たちの体温は上昇していく

それは罪よりももっと深く 愛し始めた印

あなたの瞳を覗き込む 底のない洞窟に飛び込むみたいに

あなたの全てがわかりたい もうすぐ11月 もうすぐやってくる

窓の外の風が私の限界を教えてる がくんと力が抜けて落ちる

柔らかく甘い声で私を撫でながら あなたの愛は続くあの日と同じに

それは罪よりももっと深く 見つめている印

あなたに刻まれた私は 消え去る事のない11月のTATOO

私に押し入るあなたは 消せるはずもない11月のTATOO



2001/10/30 (火) 家
秋の優しい光の中に小さなブランコが揺れてる
まだ新しいベランダには小さな靴下がいくつか
万国旗みたいにはためいて楽しそうに

名も知らぬ人が住む家に足を止めて見とれる
そこにはたとえ望んでも得られないものが
山のように詰め込まれている

そこにあなたの姿を重ねる
そこにあなたの持っているものを並べる
容易に想像できる あなたの優しい笑顔

あなたの声をリプレイしてみる
別の誰かに注がれる甘い声
あなたの夢を見ている
目覚めても抱かれる事のない冷たい夜に

通りすがりの家には
優しい木の匂いがたち込めて
あなたをどこかに連れ去っていく
私をどこかへ追い立てながら



2001/10/25 (木) 秋は静かに

あなたに寄り添いたくて 二人の時間をおねだりした
夕暮れのすれ違い あなたの冷たい手をそっと握る

1番側に居たいのは実はこんなときなのに
こんな時ほど素直になれない
よそ行きの私が 少しだけ壁を厚くする

あなたの気持ちは 多分あの頃より分かっているのに
無神経な言葉で 私を傷つけるあなたは
冬を呼ぶ北風みたい

もうすぐ 出会った季節が 再びめぐり来る季節
あの頃思いを 素直に伝えた 手抜き無く伝えた

秋は静かに 二人を呼んで
恐らくあの日と同じように
愚かで暖かな気持ちを 二人に授けるのでしょう

秋はいくらか 二人を変えて
それでも代わりの誰かは居ない
その事実だけを二人に押し付けて 去って行くのでしょう



2001/10/03 (水) 傷
あなたは大人の顔をして
そんなことばを口にするけど

それなら私のあなたへの思いは
どうやって折り合いをつけたらいいの?
勝手なこと言わないで
そんな簡単なことじゃない

あなたは人生にいくつも
もう保険をかけていて安心してる

だけど私には何も無い
何も無くてもいいくらい私は思っている
勝手に決めないで
私の心はどうなるの?

始まってしまったのなら
もう
多分あとには戻れない

戻れない

本当は好きなくせに
本当は好きなくせに

迷わないで 傷つけないでよ