月光 6



「部屋の片隅で」  2003/11/26

二酸化炭素のたまり過ぎた部屋の隅で

密かに窒息してゆく心を見ている

愛しいと言いながら

人はこんなに一人だと確認している

誰かのせいにして気が楽になるなら

それも許そうじゃないか

だけど私は

もう幸せになりたいのだ

誰かが引き換えに不幸になっても

私の幸せを呼び戻したいのだ



「仏」 2003/09/02

そこには輪廻があって
私の道はぐるぐると
そこから抜け出すきっかけはない

そこには宇宙があって
私の空はぐんぐんと
そこから伸びて見えなくなって

ああ
思い出した
この世への産道は果てしない苦しみに満ちていた

そう
思い返せば
老いてゆく細胞をひとつずつ悲しんでいた

もう
思うこともない
床に臥せ青い病人の息を吐く身体の軋み


暗闇に戻る
死は産まれると同じ苦しみで私を宇宙へ帰す

そこには
富めるものも貧しいものも
老いも若きも
差別なくただ転がる命たち

たかが人間の身体を借りたこの魂が
泣いたり笑ったり
おろおろと存在するだけの

けれどそれは
なんと美しい
仏の姿なのだろう