晴れるより雨雲に隠れ抱き合いたい 七夕の夜の2人の本音
見も知らぬ幼子の手を離れ行く笹舟待って私もゆきたい
汗ばんだ手のひらに触れて滲み出す短冊の文字は私そのもの
天駈ける乙女の声は幻か七月七日雲よ去りゆけ
手に余る女でごめん去るときは跡形も無くゆくから許して
宿り木はやがて主さえ絞め殺す感情なきまま天を目指して
悪い事最悪の事想定す 君が教えた手段は「妄想」
2002/07/07
うなだれた柳に飛びつき笑いあう集団下校とかち合う幸せ
不整脈君を求めて乱れ打ち ついえる前にデートへ行こう
ひとひらの月光を食べて生き延びる吾の為に今日は降らないで雨
正義感振りかざしてるお嬢さん人はそんなに単純じゃない
この街は 聡明・狡猾 混在す 明日枯れる花を髪に飾りて
首都高と東名つなぐ渋滞はもどかしい恋に似ていて悲しい
一瞬の隙を狙って霧晴れる2人の秘密あばくみたいに
「こうしてほしかったんだろ」君が声 そうよ掴んで粉々にして
2002/06/27
盗み見る君の視線にあおられて思わず張った胸のふくらみ
本日もウォータープルーフペンシルで眉描く君に会うまで消えぬよう
道徳と嫉妬の狭間で口をつく嫌味の中身に意味なんてない
ノーマルな男の欲望満たしゆく歓楽街の君目に浮かぶ
2002/06/21
激しくて泣いてしまいそうだから比喩だけでいい愛の歌たち
会えないと知っているのにアクセルを踏み込みこのまま散りたい泣きたい
動揺を優しく包む君じゃないそれでもこんな夜には会いたい
人間と共同作業で咲く花は整形美人みたいで切ない
我が家にもガーデニングの花があるお洒落で綺麗で吐き気がするほど
夕空に銀の軌跡がすっと伸び君の心へ飛び込め飛行機
軍用のヘリがバラバラ空をゆく不安はあなたを恋しくさせる
2002/06/10
「神様じゃないんだ もういい」君のその言葉に今夜救われている
優しくされると辛くて泣きたいの私にだけじゃないと気付いて
静かなる246をひた走る赤信号がちらりと見えた
星流るように滑りて君の手は吾の深きまで湿らせてゆく
喉ふさぐ扁桃腺の腫れよりも君の冷たい瞳が痛い
長い腕ぎゅっと結んでユーロベア会いたい夜ほど何度も何度も
君と会う約束待って買いし服いまだ出番は来ないようだし
2002/05/09
こんな日はつまらないもの沁みてくる 麦藁帽子や畑の畝や
無人販売の野菜をぶちまけて 豪快に笑うおばちゃん登場
汗だくのおばちゃん 日傘をさすあたし 一緒にトマト並べたりして
「おばちゃんが育てた絹サヤ持っていく?」おばちゃん駄目だよ泣いちゃうからさ
2002/05/08
本当はペットボトルの緑茶だけ私の渇きを癒す液体
知らぬ間に染み付いてたの君が液「愛だ」と思って受けていたから
来客に手元を見られて指先がぴんと伸びたら新茶が香る
日々青く育ちゆく木の茂れるを眺めていたってまた枯れるんだし
その指をさらりと抜けて肩に落つ吾の髪はまた風に乱れて
さあ立てよあたしは素手で炎さえ掴んで掲げる 闘争だから
2002/05/02
落ちていく心を笑う男への情熱多少褪せつつある春
すさみゆく心はきっと下らない恋しているから見あわないから
マイペース・お調子者に神経質 誰もが新人焦るな焦るな
張りつめた横顔海風吹かれつつ桜も無き春早熟な夢
新しい制服持って君は行く美し三歳(みつとせ)どうか幸あれ
2002/04/07
くるくると百面相の喧嘩さえほんとの私は隠して演じる
何回も諭す言葉はもううんざり私は今の愛で死にたい
箱根までのぼっていこうか暖かい夜だものやっと会えたのだもの
ふうわりと浮かんで落ちる花びらはその手で愛でて握りつぶして
2002/03/16
日記から短歌も詩にも目を通し私の全てと思う愚かさ
有余る想いを託し詠むたびに 「もうやめよう」って言うから詠めない
「イカナイデ」 言えないからね 「モウスコシ」それで何とかつじつま合わせて
乱暴に引き寄せる裏でその指はあまりに優しくあまりに甘く
妖精が何度もトリプルトゥループ決めてる間に声上げ抱かれて
夕刊の見出しにふっと気をとられ組んだ足先君がキスする
2002/02/26
風邪声の君のかすれた響き聞く淫らな声と聞き比べながら
練乳の甘い色した白梅が太陽見つけて媚びてほころぶ
2002/02/19
生きている更につないで生きていくその証としてここにあるのに
恋だとか愛だとかはほら幻想で妄想で病ですらあるって?
イタ電はお前なのかと問う君の戸惑いを聞くあきれ果てつつ
髪すすぐ隙にちりりとタイル打つ指輪の行方シャワーに任せて
ふりあおぐ雲は小雪を含みつつじんわり伸びて君の町まで
2002/02/18
わたくしの名を呼び捨てる君の目の神経質な色をうかがう
潔く喉元当てた刃をば引いて静かに朽ちたいけれど
編物と英語と料理とピアノまで結局そんな女が強い
2002/02/12
名誉とか報奨金とか財産もどうせ死んだら持ってけないのに
フェンスごし垣間見ていたYOKOTA BASE 戦う翼なんか欲しいかい?
滑走路青い光を消している有事かなんだか知らないけれど
手袋を買ったきつねのふわふわのしっぽが雪を撫でながら行く
音のないその音を聞く銀の雪何も言わずに抱きしめるみたい
2002/01/24
女らしい綺麗な名前に戸惑って嫉妬なんかもやっぱりしている
すれ違う瞬間に手を触れるよな密やかな時間ざっと抱き合う
坂道を登りつめたら現れた半月にやり 星を拉致する
2002/01/23
ねえおばちゃんあの人の好きな駱駝の絵ついた煙草を全部ちょうだい
別れずに初春迎えて後悔してる彼を慌てさせたいの
2002/01/21
何度でもリアルな世界をすり抜けて優しい指でおぼれる海かな
激しくしてと声にしたわけじゃないそれでも圧倒的な君の勝利
そっと見る君は優しく笑んでいて暖かな春はそこにもあった
ゴンドラの高さに怯えているだけで子供みたいな恋人みたいな
想い出は次々溢れくる君を私の色で塗りつぶしていく
尾を振ってにっこりしてる犬「お前みたい」と笑う君に手伸ばす
白砂にぽつぽつ犬の足跡を見つけて笑う同じ価値観
くねくねと君の得意なヘアピンのカーブを越えたらガラス色の海
2002/01/16
春の香の白和え作る手を覗く母の小言も今日は嬉しく
ふわふわと三十一文字に恋詠う浅はかな吾の醜態暴けり
言い訳は理路整然とこぼれくるどのみち誰かを傷つけるのに
2002/01/14
仕掛けてる駆け引きにちょっと躓いて取り乱したら怒るくせにね
間違っていると笑った君に告ぐ人の心はおもちゃじゃないんだ
「女房と通知表なんか見てたんだ」そんなの聞かなきゃ辛くもないのに
2002/01/03
「まったく」と呆れながらのその笑顔駅を背にした綺麗な立ち位置
「初売り」と売り子の声が5階から降ってくるのを手をつないで聞く
レディスの福袋見て手を伸ばす「誰のため?」とは問わずに過ぎる
人目から隠れて抱擁唇をそっと預ける今年最初の
目を閉じたまぶたもすらりの鼻筋も愛しくてキス一つ残らず
両腕に抱かれて抱いて時は過ぎ優しい声の歌に泣きそう
本当は寂しいからね笑ってて「送っていくね」と楽しげに言う
「懐かしい痛み」と歌う流行り歌そんな痛みになりたくないけど
もう少し側に居たいという気持ちわがままなんて片付けないで
冷静な顔をしている君のそのささいな情熱こぼれているよ
2002/01/02
初春の東の空は砂糖菓子口に放り込んで溶かそう
「いよいよ」と微笑んでる文字を見て貴女の幸せこんなに沁みる
携帯を12時間も握り締め待ってたことは内緒にしよう
胸をつく思いがけない優しき声遠隔操作で私をさらって
薄青いガラスの空に風当たり血が噴出したような夕暮れ
柔らかな毛布を鼻までたくしあげ眠る夜に君は似ている
2002/01/01
その胸にフェイクタトゥーの花咲いて欲望のまま夜は始まる
指先で優しく強く操られ私はピアノのように鳴くだけ
横浜の夜景を切り取る窓に立つ背中に君の重みを受けつつ
君の右手で両の手つかまれて愛されているその幸福感
ぼんやりと薄い灯りに照らされた上下に揺れて倒れる影絵
2001/12/29
月光よあの人のためにもう一度雲間から出て冷やして癒して
凛と立つ君の横顔思い出す腑抜けたおじさんなんかよりまし
右向け右罵倒している客を見る一本飛び出たまゆ毛がおかしい
あの夜も寒くて凍えそうだった君と初めて話したあの日
2001/12/08
嘘でいい抱いてて欲しいと泣いているまるで母の手ねだる迷い子
私には悪魔も恐らく住んでいてだけど君にも同じく居るだろ?
金色の銀杏があおられ飛びゆくを犬が見ている落ちる際まで
柔らかな言葉で逃げている君を知っているから許せなくなる
歌おうそして手を伸ばそう私の声で私の色で
2001/12/03
かの人の女の散り際そっと見るそこに嫉妬と言い訳つける
冬はらむ風がふうわりうなじ撫で髪梳くまるで君の冷えた手
安穏と過ごす時間の寂しさはほんの少しの安堵も混じりて
2001/11/22
燃え立った山茶花の道黙々と右足の速度遅れながらも
人生と口にするその滑稽さ潰えて消えても未練はないのに
うなずいて手をとりて今踏み出して君はそこから恐れて逃げ出す
追うことも逃げることさえ疲れ果て透明の空に居場所見つけり
あの日からためらいの秋はらはらと散って最後の一葉の恋
2001/11/02
ただ恋いて浮かされているジュリエット窓で泣くなら戦えばいい
ビル風の情けで一瞬舞い上がる落ち葉の恋はそんな瀬戸際
漆黒の月夜を四角く切り取って窓の額縁名画完成
風が行く通り道追う落ち葉たち辿りつけずに踏みしだかれて
2001/10/04
君までの1時間の距離邪魔をする嵐を追うよにアクセル踏み込む
こんなにも身体ではなく心まで寄り添っているから君は戸惑う
君の居ぬ日々を想像しただけで大雨洪水注意報
天駈ける雲の帯から手を伸ばす名月の触手全身に受けて
お互いの身体を貪るような雨嵐が去ってひとひらの月光
2001/10/01
30年かけてたどり着いた道母よあなたの夢が叶う日
淡々とあるいは炎を燃やしつつあなたの波乱の人生眺める
憎き人憎むよりもと言い聞かせ己と戦う瞳の強さ
ささやかな願い保ちて母は勝つあなたの思いが正義と知る今日
幼き日手負いの母と駈けし時それは恐らくあなたの原点
2001/09/30
晴れ渡る秋空を見るコクピット君の命を惜しむ母あり
オレンジの閃光の中に消えた人降り積もる灰は君の欠片か
激昂す俳優の顔の指導者よ戦争世紀は去年で終わりだ
くずおれるビルからそして機体から「生きたい」という電波の嵐
祈りだけこの空にそっとばらまかれ株価の行方に息飲む大人よ
2001/09/15
冷えていくその身体に手を携えて2度目の冬も越えて生きたし
雑踏で噛み締めている敗北感戦士よあなたはどこまで行ける?
ぼんやりと溢れてしまう涙なら煙草に火うつす隙に拭おう
ここからはそれぞれの家路T字路でひらりと振った手のひら愛し
2001/09/08