暮れ落ちた黒い高速飛ばしゆく 目的地はその掠れた三日月

わずか漏れ聞こえくる声聞いている ラブホの壁は薄くて硬い

躊躇する君のジャケットとったならベルトに陣取る万歩計 マジ?

夏の香をまといし君の黒き肌 君の模様としての吾の白肌(はだ)

その背には私が入れてあげるから龍さながらの欲の刺青

つんと立ちモーターショーの片隅で人形は吸う灰色の煙

2003/10/30



鮮やかに10月は来て手をひろげ夜空にビロード広げて笑う

表情も見えない闇で聞こえくる その声は魔法 瞳は呪文

君にしか残し得ない痕(あと)耳たぶに 突き刺す愛はピアスのごとく

ひざまずき君の膝割り飲み込んで見あげる私を抱き上げていって

背後から何度も波が訪れる どうしてこんなに 乱れていくの

もう一度 あと一回だけ押されたら あふれでそうで 指を噛む吾は

2003/10/10



おかしいのあなたの顔が好きなのよ 面食いじゃない はずなんだけど(笑)

悲しみは心臓を止めて走り去る そういう種類の人生もある

指を噛み沈まぬように耐えているそんな努力も君には無効

吾の指へ絡みつく蜘蛛の銀の糸たぐり寄せてよ一気に刺して

知らぬ間にもうここまで来て海がいる 呼んでいるのか 帰れというのか

2003/09/02



旅先の空気の「ひやり」は吾を食(は)んで変わらぬ友の横顔見やる

「痩せたね」と言わない君の大きな目 よく似た子らも同じ目をして

「選ばない男(やつ)に見る目がないんだよ」にっこり君は女で母で

じんわりと日焼けた肩に美白水 結局彼に触れられるために

湿りつつてのひらに触れる土をこね焼かれる窯の熱に憧れ

だるそうに蕎麦屋の軒先待っているシェルティ首輪をはずしてあげよか?

品川 千葉 多摩 相模 袖ヶ浦 帰省ラッシュを乗せてる高速

本当の幸せなんて他人にははかれやしない あなたでさえも

いつの日かここから旅立つ日が来たら 最後に抱いてそのままいかせて

2003/8/13



大風にあおられている濡れた髪 君には見られたくない醜態

「小林に似ているあの雲」ひとりごち入道雲を笑い飛ばそう

気象図の台風は祖母の墓の上 気丈な目尻のしわ思い出す

一瞬の隙をついたのこの場所へ続く道には雨上がりの虹

ただただ君がいること確かめて「それだけでいい」なんて私は嘘つき

ちゃんとしてやわらかなキスも抱擁も一から十まで触れて浸して

舞い戻る雨の音にはかすかに突き上げてくる声が混じりて

微熱さえはらんだような指先がスイッチを入れる乳房の上の

君の上はるか遠くに見えていた天国はいつもすぐそこにある

引きずられ抱き上げられて弄られて計算ずくの君の快楽

きりがない夜を詠えばあとからあとからあふれすべり落ちゆく

2003/8/8




一粒の砂が出てきたポケットの思い出探る あの夏の海

父母(ちちはは)を既に亡くしし君の言う「幸せだけれどいつでも逝ける」

27インチのジーンズ キャミソール 「年の割には」頑張っている

本当の年を言ったら逃げられる いくら年上好きの君でも

向日葵は太陽のいないこの夏に狂わされてるどこを見ている?

夏なんてどこにもないわあの日から私の時計は止まったままで

2003/7/26



ターコイズブルーのコロンが溶けていく君が肌から吾の乳房まで

削いだよな頬に頬寄せぬくもりは鋭き刃物 すっと切り傷

薄き霧ふんわりおりてくればいい裸の背中を覆うガウンだ

震えつつ君を締めゆく両足がやがて地を蹴り天へと昇る

触れている熱き肌さえ邪魔になり背を合わせつつ寝る深夜2時

拗ねている吾をなだめ割と真剣な「口づけ」 君は意外とシンプル

移り香を脱ぎ捨て君は手を振った 玄関あけるまでの恋人

2003/7/25




やはらかな産毛の皮を脱いだなら君の舌にて果汁を拭いひて

2003/07/16




ざっくりと夜空を割いた稲妻に見つからぬよう小走りになる

雨を避け丸ビル飛び込むその人に引かれた右手汚れた気分

地下鉄の湿った空気に冒されて細胞までも粟立っていく

恋なんてもう面倒でいらないわ 君の愛なら尚更面倒

2003/05/24



ずるずるとローゲージニット身につけてずれ落つ肩の白さを見せる

デニム地の上から何度も触れている昂まりに嘘はいらない 抱いて

遠すぎる記憶に頼って生きるほど私の愛は落ちぶれていない

どんよりと雲の隙間に見えるのは あれは希望か殺人ビームか

2003/01/08



もう長くこんな事にも慣れただろう 言い聞かせても悔しい日もあり

どの面を下げて言うのだ馬鹿にして 言葉を飲んでやっと笑って

味方だと臆面もなく信じてた「強くなければ」 言い聞かせてみる

2002/12/18



分厚くて意地悪そうな雲がいる私の空を見せてと言っても

荒れ出した指先みたいなこの心穏やかに癒す君と星空

ちくちくと痛んでいるのは吾の乳房?あるいは良心抱えた心臓?

この服もこのマスカラも気に入らない 君に会うから綺麗になりたい

おじさまの外れた音程励まして タンバリン打つ  「帰らせて」と思う

疲れ果て帰る先では本当は あなたの胸で本音を言いたい

何度でも欲しいと思う舌先があなたをなぞる 隅から隅まで

そっと触れさまようたびにうっすらと漏れる吐息にあなたを見上げる

ゆっくりとのぼりつめゆくその刹那 君の瞳が吾を見つめおり

「いいぞ」って耳元でそっとつぶやかれ快楽は胸のふくらみを滑る

2002/12/06


意地悪な言葉と言葉のその隙に抱き寄せる腕のあたたかきこと

この胸を両手で割いて見せたとて君は批判と揶揄しか見せない

ほっそりと秋の三日月ついてきた玄関先で「またね」と手を振る

もう他に客の座らぬ店にいて2人の会話がさらわれてゆく

ホントウハコンナミジカイ時間デハ寂シスギルと云イタカッタノ

バスタブにぼんやり座っているような君の抱擁一人占めにする

君の住む街から来ているトラックがびゅんと過ぎたら涙が落ちた

ただひとえにこのぬくもりのみ求めあたしは待って待ち続けてた

2002/10/09


仕事より君をとりたい日もありて 今から行くよ追いかけて行くよ

地下鉄と私鉄を乗り継ぎ工業の街に降り立つ 君を捜して

この街のこのベンチにももしかして君は座った?誰と歩いた?

しらじらとビジネスホテルの照明は一人待つ身を包んで癒して

ドアからの侵入者 君のいたずらな優しい瞳やさしい指先

暖かいベッドの海で溺れてる苦しげな息で吐き出す愛情

目覚めるとするりと肌をすべる腕 ああ君がいるああここにいる

それだけでいいとこんなにおもうのに わかれる朝のなんと無情な

2002/09/05


穏やかに君の不在を噛みながら繰り返し問う「私はどこへ?」

遮光するカーテンざっと舞い上げて心を見透かす夏の嵐よ

「ホットで」と背後の客の声を聞く 「君と同じ」とつぶやいてみる

愛も恋も慈悲も憎しみも違う 君と私のこの関係は

陽に焼けて火照った君を癒すのは 柔らかな乳房凍った魂

2002/08/03(土)


このビルの9階にあるレストランあの日も君はためらっていた

凪いでいく心の底で貝殻はそれでも君に拾われたくて

この髪をざっとあおった強風は君のよくする悪戯に似て

ただ1人だけでいいのだこの道を交えて進む同志の数は

「それ頂戴?」真顔で言ってる犬の目に笑ってしゃがむと涙が出そう

誰からもきっと笑って見えるよね 私誰にも怒ってないよね?

2002/07/28(日)


死んでゆく愛の形をおろおろと持ち上げてみたりたたいてみたり

特別な人と別れる手段なら メールじゃなくて血の文字で書く

お互いの知らない時間がお互いを傷つけ合うわけ 糧にはならない

あの人の幸せは吾を引き裂く剣 吾の幸せはあの人落とす火

「さよなら」ときれいな呪文をとなえたら私はどこまで行けるのですか?

ヒュンと泣きロケット花火は色褪せた焼いて欲しいのカラダの奥まで

2002/07/23(火)


今どこで何をしていて何思う 知らない方がいい事もある

息を飲む巨大プラント仰ぎ見て 作りたもうは名も無き老人

太陽をじっと見詰めたサングラスいいの盲目それで本望

海風がふっと香ると思い出すあなたはどこで笑っているの

君なんて居なくてもほら笑ってる笑い過ぎたな涙一粒

人なんてなんて小さく下らなく跡形も無く死んでゆくだけ

2002/07/21(日)


泣き笑いくるくる変われる我を見て「女優」と笑う君こそ監督

ドア越しの鏡に映れる横顔は吾にさえ隠す君の真実

十代のませた歌声聞きながら泣いてる私は子供みたいだ

呆然と君の身体に見とれてるなんて綺麗ななんて華麗な

2002/07/14(日)